「御坂の家」再生の過程

倉敷町家トラストの第一号再生利活用物件です。宿泊体験施設として利用されています。御坂の家ホームページはこちら

再生スケジュール(2007年)

2006年10月8日

 古民家の再生を行うにはまずその家の構造や形状などを測量することから始まります。そこから設計を進めるわけですが、外観からだけではわからない部分も多く、天井や壁、床板などを取り外してみないとわからない部分もあります。
 そこのでこの日は楢村徹設計事務所でひらかれている「倉敷再生塾」(若い世代に倉敷のまちをよりよくするための知識や技術を講義・ワークショップを行い伝えていく活動を行っています)の有志の方に集まっていただき、家の中に置いたままの家具や廃棄物、古材などを運び出す作業を行いました。


 楢村氏の指示の元、(有)フォーレストハウスの方を中心に家具、障子、瓦、畳などを運び出していきます。この日は気温が高く、想像以上の建材の量もあり大変な作業になりました。長い間管理されていなかったため埃もたくさんつもっており、全員マスク着用でがんばりました。旧小林邸は細い坂の上にあるため重機はもちろん、荷物を運び出す軽トラックでさえ坂の下までしか入れません。そこで再生塾生徒さん達が坂の上から下までバケツリレーの要領で荷物を降ろしていきました。


 床や家具などを撤去し、主要構造部分だけが残りました。これで土台や柱の位置がはっきりわかるようになります。これを設計図と照らし合わせていきます。思った以上に老朽化が激しく、ほとんど新しい物に取り替えなければ難しそうです。

2007年7月22日

 7月22日(日)は延期になっていた「御坂の家」解体ワークショップを行いました。
曇り空の中、朝9時にスタート。
 続々とボランティアの方々が8人ほど集まり大工さん2人の手助けのもとまずは屋根にのっている瓦を全ておろしていきます。たった10坪の家なのですが、すごい瓦の量です。すべて手作業で下ろし、一部は外構に使用するために現場に残し、その他は皆さん坂の途中に等間隔で並び、瓦2〜3枚ずつを手渡し(バケツリレー)で 坂の下の車へ運びました。


 隣りの人との間隔や立ち方、渡すタイミングなど、次第に知恵がつきお互い初対面の人が多いにも関らず、皆さんの息の合ったリレーは本当に素晴らしかったです。瓦は昔ながらの工法で、土を使って葺いているので、解体をしているとすごい土埃です。皆マスクをしていながらも腕や顔が真っ黒になりました。



 昼からの参加者も加勢し、常時10〜14人で作業は進みます。その後屋根の下地を解体し、木材を運び出します。木材も釘がたくさん付いたままで危険が多く、みなさんお互い声をかけ合いながら下へ運びます。さて、最後は屋根にのっていた土や壁の土を土のう袋に入れ坂の下へ。17:00すぎ今日の作業は終了し、屋根の華奢な小屋組みが露わになりました。ボランティアには、会員の方々、岡山理科大学専門学校の学生さん、 また近所の方など総勢22人にご協力いただきました。また、中国新聞社さんからのお茶の差し入れ、会員の方からの差し入れもいただきありがとうございました。

 引き続き、工事は進んでいます。あと2日間は壁の土壁、残材を運ぶ作業。その後は基礎工事(これは特に男性の力が必要です)。随時、お手伝いくださる方募集中ですので、平日でもご協力できる方は直接現地へお越しください。なお、汚れてもよい服装と、タオル、帽子、水分補給等も お忘れなく! よろしくお願いします。

2007年8月26日

 解体ワークショップ後も着々と工事は進んでいました。8月。猛暑が続く毎日でしたがお盆前までに、基礎の下に敷く砕石をネコ車で運ぶ作業。そしてコンクリートを運ぶ作業と暑さの上に重労働という過酷な作業でしたが、会員の方にも手伝っていただきました。この汗の量でかなりのカロリー消費です!

 基礎が固まった後は主体構造の加工です。柱や梁、再利用できるものはそのまま活かし腐った部分には新しい部材を取替え又は接いでいきます。既存の構造と合わせながらの作業なので、すべて現場での加工です。大工さんの腕が光ります。フォーレストハウスの大工・兵藤さんが新しい桁の仕口を加工中。新しい柱と古いままの梁。新旧のコントラストが鮮やかに組みあがっていきます。


 そしていよいよ8月26日(日)上棟式を迎えることができました。阿智神社の宮司・石村さんに来ていただき、理事や会員が出席する中神事を執り行いました。祭壇には、お神酒(森田酒造)、塩、米(岡山産)、水(高梁川)、餅(会員三宅毅さん)、駄菓子(夢や)と地元産の供え物が並びます。出席する理事と大工。


 さあ、その後はお待ちかねの「餅撒き」です。こんなにも人集りが!近所の子供たちなど約60人が一斉に集まり、16:00、小屋組みに上がった工務店の方3人と中村代表、仁科の5人で上から餅と駄菓子を撒きます。大きな餅(四隅の餅)は争奪戦です!生き生きと紅白餅200袋を上からまく中村代表。大工さんへのご祝儀代わりとして、「御坂の家・宿泊券」をお渡ししました。完成まで苦労が多いかと思いますが、怪我の無い様宜しくお願いします。

 そして最後に関係者一同で上棟・記念撮影。トラストを立ち上げてから早1年。皆の想いが形になってきました!

2007年10月20日

 10月20,21日は阿智神社のお祭りに合わせて、毎年恒例となってきた「倉敷屏風祭り」。御坂の家では、まだ工事中ではありましたが内部を片付け、楢村徹さん(副代表理事)が主催する「倉敷再生塾」の塾生の方が主体となって企画、お披露目をしました。創作屏風は2種類展示。塾生でもある栗生雅史さん(アーツ&クラフツビレッジ)製作の間仕切りに一つは加納容子さん(ひのき草木染織工房)の草木染め麻タペストリー 。もう一つには原田豊美さん(アーツ&クラフツビレッジ)の桜染め裂き織り布 が張られました。

  屏風の下敷きには、これも塾生・瀧山雄一さんの倉敷段通が。そして、生け花は塾生・岩本尚子さんの季節の花が生けられ、工事現場であることをしばし忘れるほど、良いしつらえになりました。


 そして迎えた初日20日は生憎の寒空でしたが、着物で迎えてくれる岩本さんとお手伝いに来てくれた塾生や会員の方々のお陰でたくさんの見学者が“御坂”を上り、家に来てくれました!そして、倉敷ケーブルTVの生放送が御坂の家から行われ、その効果もあり日曜日はたくさんの人出で賑わいました。来られた方は家の中からの眺めに驚き「こんなところでのんびり泊まりたい」という声が多く、また、昔(工事前)の状態を知っている方は生まれ変わった姿にさらにビックリされていました。左官ワークショップに参加してくれた子どもさんもお母さんに「僕ここ塗った!」と披露していました。

  今回は初めての内部公開ということもあり、ご近所の方を始め観光客の方へのPRにも繋がりました。去年の屏風祭りのパネル展示に比べると、実物があることで私たちの活動を感じてもらえ、何よりも会員の方々に協力していただき賑やかな2日間になったことが一年間の成長ぶりを実感できました。